し残したケンカや、言えなかった謝罪

大切な人との別れ(死別や失恋など)は

たいへん悲しいものですが、

悲哀反応は通常、数か月でおさまり、

どれだけ悲しくても、人はまたなんとか

未来へ向かって歩き出そうとするものだと言われています。

(大切な人や悲しかった事実を忘れるということではありません)。

 

悲しい出来事をとことん悲しみ尽くし、

やがて立ち直るこうした心の作業を、

心理学用語で「喪の作業」と言いますが、

この喪の作業がなかなか進まず、

どれだけたっても悲哀反応がなかなかおさまらず、

ずっと涙が止まらなかったり、

悲しみや落ち込み、意欲の減退などがいつまでも続くことがあります。

 

こうした場合、心の中に

失った人との関係性の中でのし残した作業があり、

それがいなくなった人を相手に処理しきれないまま残っていることが

多いと言われています。

 

まず一つはいなくなった相手に対する罪悪感、

謝ろうにも目の前にいない相手に対して

どうすれば謝ったことになるのか、

それが分からないまま苦しくなることが多いでしょう。

 

またいなくなった相手に対して思うことは、

たとえもう会うことがなくなったとしても、

必ずしも良いことばかりだとはかぎりません。

別れが起きる以前さながらに

その人に対して怒りを感じたままであるという場合もありますが、

亡くなった人や離別した人に対しては、

この「怒り」の感情を取り扱うことが大変難しくなります。

 

大切な人との別れ(死別や離別など)のあと、

悲哀反応が非常に長く強く続いて、

なかなか次に向かって歩き出せない場合は、

その大切だった人との間に、

し残したケンカや、伝えられなかった謝罪が

まだ心の中にあるのかも知れないと考えてみることから、

出口の見えなくなった心が動き出すことがあります。

 

(心理士 清見)

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