こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
5月も下旬に入り、早い夏の訪れを予感させるような気温の高い日が増えてきました。
とは言え、朝晩は急に冷え込みが厳しくなる日もあります。体調を崩さないよう、気を付けたいものです。
さて、毎回“こころ”に関する話をお届けしている当ブログ。
今回は「脳の実行機能とは?」と題し、目標に到達するための行動の組み立て方について綴りたいと思います。
大人になってから気付く“上手くいかなさ”
カウンセリングをしている中で、学校時代には適応に大きな問題が無かったにもかかわらず、自由度が高くなった大学生や大人になってから“上手くいかなさを持つ人”とよく出会います。
その中には「大人の発達障害」と呼ばれる、比較的軽症の脳機能の偏りを持つ人が含まれると思います。
そのような人の訴えに多いのが、以下のような認識や行動です。
・自分は周りの人に比べて要領が悪い
・仕事の優先順位をつけるのが苦手
・自分で意図して、より良いものを考えていくことが出来ない
・自分で業務などを順番に組み立てることが出来ない
・他人からのアドバイスを受けても、自分の考えを柔軟に変えられず「とにかくやってみないと分からないから…」と突っ走って行動し、失敗する
もしかすると「自分もそうかもしれない」と、思い当たる節がある人がいるかもしれません。
なぜ小・中・高校時代は適応出来ていたの?
さて、大学生や社会人など大人になってから“上手くいかなさ”に気付いた人は、その前段階である小・中・高校時代はどのように適応出来ていたのでしょうか?
その理由は、大雑把に言えば「受け身の行動だったから」かもしれません。
小・中・高校時代は、先生から評価されない行動をしないように注意して、学校の規則に従っていれば、大きな問題は起こらない可能性が高いでしょう。
勉強においても、学校で出される問題には回答が用意されているので、そこへ辿り着くようにプロセスを踏めば何とかなりそうです。
たとえ本人の自発的な行動や考えがなかったとしても、学校で禁止されたり叱られたりすることを避けるやり方で、何となく過ごせる場合があります。
ただし、「自分は他の人のように未来へ向かうプロセスを描き、行動するのが苦手だな」と、漠然とした不安を抱きながらも。
実行(遂行)機能とは?
ここで「実行(遂行)機能」について触れてみましょう。
実行機能とは、複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム、あるいはそれら認知制御機能の総称である(※)
※A Miyake, P Shah (Eds)Models of Working Memory: Mechanisms of Active Maintenance and Executive Control Cambridge University Press:1999
と、述べられています。
つまり、実行機能とは目標に到達するための行動の組み立てなのです。
しかし、目標に到達するためには「物事を深く考えること」が必要です。
そこには、
①意欲を持ち
②想像を膨らませ
➂必要な情報を記憶から取ってくること
が必要です。
さらに、
④記憶から取ってきた情報を分析して
⑤選択・判断して
⑥実現する方向へ舵を切る。ここには時間感覚が必要。
といったプロセスを踏んで、辛抱強く気持ちをコントロールしながら辿り着くのが「実行機能」と言えます。
実行機能が上手くいっていない場合は?
さて、ここで実行機能が上手くいっていない場合について考えてみましょう。
先ほど挙げたプロセス①~⑥の中で、あなたはどれが苦手でしょうか?
どの部分で時間がかかり、滞る様子がありますか?
自分の中にある苦手意識や分からない苦痛を紐解いていくことと、「やれば出来る」行動に結びつけることが大切でしょう。
そうして成功体験を重ね、しっかり記憶や身体に刻み込むのが良さそうです。
(臨床心理士 調)