こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
福岡に夏の訪れを告げる風物詩「博多祇園山笠」が終わると、博多の街は一気に夏色へと変わります。
福岡臨床心理オフィスがある博多駅界隈も、どこかソワソワとした雰囲気に包まれています。
それと同時に、これから暑さが厳しさを増していきますので、室内外を問わず熱中症対策をしっかりしましょう。
さて、毎回“こころ”に関する話題をお届けしている当ブログ。
今回は、喫茶店で過ごす時間の価値について、先日私が体験したことを交えて綴りたいと思います。
久しぶりに訪れた喫茶店で感じたこと
このところ、大学で仕事をする日に、大学近辺にある喫茶店でコーヒーを飲む機会が増えました。
仕事で待ち合わせをしたり、あらかじめ友人と会う約束をしていたりする訳ではなく、1人でぶらりと店に入る…そのような形で喫茶店を訪れるのは、久しぶりのような気がします。
先日、7年ぶりにある喫茶店へ入りました。
そこは昔ながらの学生街の喫茶店を思わせる風情が漂う、いわば昭和レトロな雰囲気のお店です。
ホットサンドを注文し、7年前と全く変わらない味に感心しつつ、コーヒーに生クリームを溶かして飲むスタイルを懐かしく思いました。
しかし何よりも驚いたのが、その喫茶店が提供する空間が、かつて訪れていた頃と同じようにそこにあることでした。
もちろん、店主があの頃よりもお年を召しているのは、見た目の変化で分かります。
ところが、喫茶店全体を包む空気感は何も変わっていないように思いました。
果たして、それは一体なぜなのだろう…とコーヒーを飲みながら考えてみました。
五感を使って楽しむひととき
喫茶店の空気感を作り上げているのは、カウンターや椅子などの調度品や、窓の外に広がる景色など目で見て確認できるものや、店に集まる人の楽しそうな話し声、コーヒーの芳香、適度な温度と湿度に整えられた空調、そして指に馴染むカップの曲線…。
気が付けば、自分の五感を使って喫茶店でのひとときを楽しんでいました。
昔と変わらない喫茶店の空気感に満足すると、自然に呼吸が深くゆっくりになり、リラックスしていました。
お気に入りの店で起きた出来事
1人で喫茶店へ足を運ぶことが増え、以前から気になっていたお店にも入ってみました。
そこでは老夫婦が細やかな気配りをしながら、心地良い空間を保っていると感じました。
すっかり気に入って2回続けて通い、3回目に訪れた時のことです。
カウンターの隣の席に、タバコの臭いを漂わせている人が座りました。
そのお店は禁煙ですので、入店前に吸ったか、服に臭いが染みついているのか…。なかなか強烈な臭いがしました。
もちろん、タバコを吸うのは個人の自由であり、その人は店内では喫煙していません。
しかし、私の気に入った空間は嗅覚からあっけなく崩れていきました。
喫茶店で過ごす時間の価値とは?
それは残念な体験ではありましたが、崩れたからこそ気付くことがありました。
それは、喫茶店でコーヒーを飲む価値についてです。
コーヒーの味や店に漂う香り、景色など五感を使って「この場所はOK」とした時に、頭の中がほどけて心の世界が好きなように遊び始める感覚が心地良いのかな、それがくつろげるということなのかしら、と思いました。
そして、お店の方の細やかな気配りや集まる人達の幸せそうな表情や雑談も、魅力的な空間を作り上げる大切な要素でしょう。
そういったお気に入りの場所がコロナ禍を潜り抜け、そこにあり続けてくれることに対して、素直に“ありがとう”という感謝の気持ちが湧きました。
(臨床心理士 調)