こんにちは、福岡臨床心理オフィスです。
2024年も9月に入り、朝晩は涼しく感じる日が増えてきました。
しかし、日中は強い日差しが降り注ぐ日もあり、服装に頭を悩ませる方が多いのではないでしょうか。
急な温度変化による風邪などには気をつけたいものです。
さて、毎回“こころ”に関する話題を、臨床心理士の目線からお届けしている当ブログ。
今回は、喫茶店などでハンズフリーイヤホンで話し続ける人に対して抱く違和感についてのお話です。
見えない相手と話す人に対しての不快感
人間の脳は、近くで複数人のグループがおしゃべりをしていても、聞き流すことが出来るようになっているそうです。
もちろん、大きな声や感情的なやり取りは別ですが…。
しかし、ハンズフリーイヤホンで見えない相手と会話をしている人の声を聞くと、なんとなく不快感を抱いたりイライラしたりすることがあります。
特に、聴覚の良い人はそうかもしれません。
それはなぜでしょうか?
その理由について、ニューヨークタイムズ紙が興味深い記事を掲載していました。
イライラする原因は「halfalogue(半分だけの会話)」のせい?
ニューヨークタイムズ紙の記事から一部引用して、ご紹介します。
「誰かが話しているのに、その会話の相手の発言は聞こえない状態に置かれると、私たちはずっと、その会話の断片を文脈の中に位置づけようとし続けます。そのため、そちらにばかり気をとられ、何をしようとしていたにせよ、ほかには気がまわらなくなるのです」と、この問題を研究したGalvan博士らは言っています。
会話している片方の言葉しか聞こえない状況は、最近では「halfalogue(半分だけの会話)」と呼ばれています。そうした状況では、その場を離れる自由がないため、イライラするのです。
つまり、私たちの認知機能が“見えない相手と会話をしている人の話し声(半分だけの会話)”に乗っ取られてしまうということです。
同じ空間でそれぞれの人が心地良く過ごすために
喫茶店などの飲食店においてハンズフリーイヤホンを使った会話をする人は、同じ空間で迷惑に思っている人がいることに気付かない場合がほとんどです。
人間の認知が、この近年で急速に増加したハンズフリーイヤホンを使用しての“新しい会話”を側で聞くことに慣れないからでしょうか…?
実は、喜怒哀楽や快・不快のような感情の動きとして表される心の働きの中には、脳内にある大脳辺縁系と言われる発生学的に古い領域が関係しています。
現在では、多くの人がハンズフリーイヤホンを使用する目的を理解し、自らも使用して便利なものであると“新しい脳(大脳新皮質)”では認めているかもしれません。
一方で、古い領域の脳では“新しい会話”に対して「不快」「嫌悪」「意味不明」といった感情を抱いているのかもしれません。
そして、これは安全か危険かを探っている可能性もあります。
もしそうであれば興味深い事ですし、思わず自分の体に突っ込みを入れたくなります。
多くの人が集まる場所では、自分の言動や行動が他人の空間や時間に影響を与えているかもしれないと考え、それぞれの人が心地良く過ごせるように振舞うことを意識してほしいと思います。
(臨床心理士 調)