こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
今年は、桜の開花から満開までがあっという間だったように感じます。
桜の枝にとまって嬉しそうにさえずる小鳥たちの姿に、思わず笑みがこぼれました。
さて、毎回“こころ”に関する話題をお届けしている当ブログ。
今回は「新しい出会いには意味がある」と題して、綴りたいと思います。
「日日是好日」の意味とは?
私には、春になると思い出す場面があります。
それは、和室に正座して床の間の掛け軸を静かに眺めている場面です。
手前には季節の花が生けられています。
お茶の先生がにこやかに、横にいらっしゃいます。
その掛け軸には「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」と書かれていました。
「日日是好日」とは禅の言葉であり、「今日が自分にとってかけがえのない一日である」という意味です。
そしてもう一つ、別の解釈を聞いたことがあります。
それは「毎日が平穏で何事もないことを良しとする」というものです。
皆さんは、「毎日が平穏で何事もないことを良しとする」と聞いてどのように思いましたか?
実は、この言葉を解釈する時には注意が必要です。
日々の出来事をあるがままに受け入れる
「日日是好日」=毎日が平穏で何事もないことを良しとする。
という解釈は、どうやら違っているようです。
滋賀県にある青岸寺の住職・永島匡宏さんによると、
「仏教で言う『生老病死』からも分かるように、人生において苦しいことが多いけれども、起きた出来事について一喜一憂し過ぎず、今おかれている状況をあるがままに享受して受け入れる。その覚悟があれば、毎日がどんな日であろうと良き日であるし、毎日が新しい日々の道徳なのだと気付く」。
という意味だそうです。
人間関係で起こる悲しみ、苦しみ
ここで、仏教用語の「生老病死」について改めて調べてみました。
「生老病死」とは、いわゆる「四苦八苦」の「四苦」です。
人として避けられない4つの苦しみ(生まれる、老いる、病気になる、死ぬ)を表しています。
この4つの苦しみに、以下の4つを加えたものが「四苦八苦」です。
➀愛別離苦(あいべつりく)…大切な人であっても離れなければいけない苦しみ
②怨憎会苦(おんぞうえく)…大嫌いな人でも出会ってしまう
➂求不得苦(ぐふとっく)…求める物事が手に入らない苦しみ
④五陰盛苦(ごうんじょうく)…自分の心や身体すら思い通りにならない苦しみ
特に上の二苦は、
それでは次に、心理学的な面から「四苦八苦」と「日日是好日」について考えていきたいと思います。
苦しい出来事にも意味がある?
人が生きるということは、「四苦八苦」が巡って来るものだと覚悟することが大切なのでしょう。
臨床心理学でいえば、メタ認知として「生きるとはそういうものだ」という気持ちを持つのが前提になるのでしょう。
そして心が苦しいときには苦しいことを認めつつ、メタ認知と内的対話をしながらその苦しみを辛抱強く受け入れていく…。
その苦しさの意味について想像を巡らしていく…。
それによってようやく「今起きている苦しい出来事にも意味がある」という認識になり、「日日是好日」に辿り着くのでは?
メタ認知については、過去の記事で解説しています。
下記の記事をご覧ください。
春になって、これまでとは違う環境での生活や、新しい人間関係がスタートしている方もいらっしゃるでしょう。
皆さんのそれぞれの出会いが、幸多いものになりますように。
(臨床心理士 調)