こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
新緑が美しい季節から、ふとした瞬間に夏の気配を感じる時季になってきました。
季節の変わり目は体調を崩しやすい時期でもありますので、どうぞご自愛ください。
さて、毎回“こころ”に関する話題をお届けしている当ブログ。
今回は「思い通りにいかない事柄に耐える力」というテーマで綴ってみたいと思います。
そのストレス、“思い通りにいかない”からかもしれません
日常のささいな出来事でストレスを感じることは、誰にでもあります。
たとえば車の運転で言えば、
迂回した先では一方通行に何度も引っかかってしまう…。
そんな出来事に遭遇すると、「時間をロスしてしまった」「すっといかずにイライラした」と、残念な気持ちになるかもしれません。
このようなとき、立ち止まって考えてみたいのは、
「いつの間にか、物事が自分の思い通りに、効率よく進むことを当然だと思っている」という点です。
けれど考えてみると、水道管が破裂すれば、困るのは私たち自身です。
つまり、水道工事は私たちの暮らしを支える大切な作業であり、本来であれば感謝すべき出来事かもしれません。
それでも「目的地にスムーズに着けなかった」ことに気持ちがとらわれ、ストレスを感じてしまうのは、つい“自分目線”で物事を見てしまっているからでしょう。
携帯電話がなかった頃を思い出すと…
そんなふうに考えていたら、ふと、携帯電話がなかった時代のことを思い出しました。
当時、連絡手段といえば自宅や会社にある固定電話くらい。
待ち合わせをして相手が来なかったときも、「電車が遅れているのかな」「電話で引き留められたのかも」と、相手の状況を想像しながら、辛抱強く待っていたように思います。
遅れている人も、「待たせてしまっているかもしれない」と心の中でつぶやきながら、相手の姿を思い浮かべていたことでしょう。
連絡の手段がなかったからこそ、双方が“こころ”で状況を推し量っていたのかもしれません。
もちろん、怒って帰るのも自由でした。
けれども、「思い通りにいかないことに耐える経験」は、同時に『相手の立場や状況を想像する経験』にもなります。
そういった経験につながる出来事は、あの頃のほうが日常に多くあったように感じます。
「すべてが自分の思い通りに進むとは限らない」という現実を、少しずつ受け入れていく力。
それが、今回のテーマでもある「思い通りにいかない事柄に耐える力」につながっていくように思います。
“耐える力”もまた、大切な経験
仕事の場面では、与えられた役割を果たし、生産性を上げることが求められます。
そのために、
1.時間の使い方に優先順位をつける
2.先輩から引き継いだ仕事を上手に取り入れる
3.報連相でチームに進捗状況を説明する
ことなどで、効率を意識して、自分の思い描いた通りに物事を進める経験が必要です。
しかし同時に、思い通りにいかないことを受け入れて、柔軟に対応する経験もまた、大切なのではないでしょうか。
「物事は必ずしも思い通りには進まない」。
その現実を受け止める力は、今の時代を穏やかに生きるための、大切な“こころの筋力”になるのだと思います。
(臨床心理士 調)