こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
10月に入り、朝夕は少しずつ秋らしい空気を感じるようになってきました。
日中はまだ暑さの残る日もありますが、季節の変わり目を感じる頃です。
さて、毎回「こころ」に関するさまざまな話題をお届けしている当ブログ。
今回は「3者関係と2者関係の違い」を軸に、綴りたいと思います。

1対1なら上手くいくのに…
カウンセリングの中で、人間関係の苦手さが話題になることがあります。
クライエントさんのお話をじっと聴いていると、時々、あるパターンに気がつくことがあります。
それは、「自分と相手だけがいる時には、関係がうまく構築できているけれど、そこにもう1人入ると、急に関係が難しくなる」というものです。
たとえば、
・家族の中で、娘と母親の2者関係が良好である。
・あるいは、息子と父親の2者関係が良好である。
このように、1対1の関係をつくることができている場合があります。
ところが、そこにもう1人の家族が入ってくると、急に気まずくなり、誰かが無言になってその場に加わっていないような状態になることもあります。
あるいは反対に、3人のうちの1人を「邪魔者」のように扱い、「あなたは別にそこにいなくてもいいのに」といったニュアンスで、無視したり、遠ざけようとしたりすることもあります。
一見すると正反対のようですが、「3人で関係をつくることが苦手」という点では、どちらも3者関係の難しさとして考えることができます。
3者になると、2者関係にはなかった不安定な要素が入り、葛藤が生じやすくなるからです。

2者関係は「私とあなた」の世界
では、3者関係の中で、どのような葛藤が生まれるのでしょうか。
まず、2者関係について考えてみます。
子どもから見た「お母さんとの関係」や「お父さんとの関係」は、いわば、「私とあなた」の世界です。
2人の間では、お互いがお互いを確認しやすいため、「私はここにいていい」「この人は私を大切にしてくれている」という安心感が得やすい世界です。
精神分析的な考え方からいえば、2者関係は、人との間に基本的な信頼関係を育んでいく世界とも考えられます。
まずは、「私は大丈夫」「この人も大丈夫」という感覚を持てること。
これは、人との関係をつくっていくうえでの基本的な土台になります。

3者関係になると、そこに「待つこと」が必要になる
では、3者関係はどうでしょうか。
たとえば、子どもから見て、お父さんとお母さんが2人で話をしているとします。
大人同士で何か難しい話をしていると、子どもは「自分だけ仲間外れにされた」「自分だけ置いていかれた」というような寂しさや疎外感を感じるかもしれません。
これは自然なことです。
しかし、そこで少しずつ経験していくことがあります。
それは、「今はお父さんとお母さんが話しているけれど、私をのけ者にしようとしているわけではない」と信じて、待つことです。
「今は2人で話しているけれど、また後で仲良くできるだろう」
そう思えること。
そして、実際にまた自分も仲間に入れることを経験する。
これが、3者関係の一つの大切なところです。

つまり、3者関係では「今すぐ自分の欲求が満たされなくても、相手を信じて待つことができる」ということが大切になります。
そのためには、子どもに「待っていてね」と声をかけたり、少し気にかけたりしながら、「待つこと」を応援することも必要でしょう。
そうやって、子どもは3者関係を少しずつ練習していきます。
家族の中での3者関係から、社会の人間関係へ
子どもが成長していくと、3者関係を経験する場面はどんどん増えていきます。
幼稚園や学校に行けば、友達同士の関係ができます。
3人で遊ぶこともあれば、2人が話していて、もう1人が待つこともあるでしょう。誰かが別の子と遊ぶこともあります。
そのとき、「自分と仲良くしていたのに、どうしてあの子と遊ぶの?」と感じることがあるかもしれません。
しかし、そこで「相手には相手の関係がある」「自分との関係がなくなったわけではない」と経験していくのです。
家族の中で経験した3者関係は、その後の学校や社会での人間関係にもつながっていきます。

相手には、相手の世界がある
3者関係の大切なところは「相手には相手の世界がある」ということを、頭だけではなく、体験として理解していくことではないでしょうか。
・自分の思い通りにはいかない。
・相手には相手の事情がある。
・自分が信じてもらいたいと思っていても、相手には相手の考えがある。
それを認めることです。
それは、決して「自分が否定された」ということではありません。
「自分は大切にされていない」ということでもありません。ただ、「あなたには、あなたの世界があるんだね」ということです。
もちろん、少し寂しいことではあります。けれども、その寂しさを抱えながら、相手を信じて待つ。
3者関係では、そうした経験が大切なのだと思います。

カップルの関係にもある「2者関係」と「3者関係」
このことは、子どもの人間関係だけの話ではありません。カップルカウンセリングの中でも、2者関係と3者関係について考えることがあります。
恋人同士が仲良く、お互いを大切にすることは、とても自然なことです。
ただ、その関係の中に閉じてしまい、「自分と一緒でないと許せない」「自分以外の人と親しくすることが許せない」となってしまうと、相手の世界を認めることが難しくなっていきます。
独占欲や依存との関係
ここには、独占欲や依存といった問題が関係してくることもあります。
・親しい相手を自分だけのものにしたくなる。
・自分と相手との間に誰かが入ることが許せない。
・相手が自分の思い通りに行動しないと、不安になる。
そうしたときには「私は今、2者関係だけを求めているのではないか」と振り返ってみることも、一つの手がかりになるかもしれません。
相手は自分のものではありません。
そして、自分も相手のものではありません。
それぞれに自分の世界があり、その上で関係をつくっていく。
そのことを理解していくことが、3者関係につながっていきます。

「相手をコントロールしたくなる」ことともつながっている
3者関係を認めることが難しいと「相手には相手の世界がある」ということを受け入れにくくなります。
すると「こうしてほしい」「こうするべき」「自分と一緒にいてほしい」と、相手を自分の思い通りにしようとすることがあります。
相手をコントロールしようとすることにも、こうした関係のあり方が関係している場合があります。
親密な関係の中で「あなたと私は一つなのだから、あなたは私の思い通りになるはず」という感覚が強くなっていくと、相手の意思や世界を認めることが難しくなる、ということは考えられるでしょう。
「待つ」経験が少なくなっている?
また、今の時代について考えると、3者関係を学ぶうえで「待つ」という経験が、以前より少なくなっているのではないか、と感じることもあります。
近年はSNSやスマートフォンの発達によって、相手とすぐに連絡が取れるようになりました。
メッセージを送れば、すぐに返事が来ることを期待してしまう人も少なくないでしょう。
以前は、相手からの返事を何時間、あるいは何日も待つことが、今より普通だったかもしれません。
今は、すぐにつながることができるからこそ、「相手の反応を待つ」という経験をする機会が少なくなっているのかもしれません。
もちろん、SNSそのものが悪いという話ではありません。
ただ、人間関係には「今はつながっていないけれど、それでも関係は続いている」という時間があります。
その時間を経験することも、人との関係を築くうえでは大切なのではないでしょうか。

3者関係は、誰もが少しずつ練習していくもの
「3者関係は苦手ですか?」
この問いに、自分もそうかもしれない、と感じる方がいるかもしれません。
・1対1なら安心できる。
・でも、3人になると急に不安になる。
・親しい人が別の人と話していると、置いていかれたように感じる。
・相手からの返事を待つことが苦手。
・相手に自分だけを見ていてほしくなる。
そうしたことがあるからといって、自分を責める必要はありません。
2者関係は、人との信頼を育てるために必要なものです。

そのうえで、人は成長の過程の中で「自分と相手は違う」「相手には相手の世界がある」ということを、少しずつ経験していきます。
そして「今は少し寂しいけれど、待ってみよう」「今、自分が相手の一番ではなくても、関係がなくなったわけではない」と信じられるようになっていく。
家族の中でも、学校でも、職場でも、友人関係でも、そしてカップルの関係でも、そこには必ず「もう一人の誰か」や「自分とは別の世界」が存在します。
そのことを受け入れながら、人との関係をつくっていく。3者関係は、最初から上手にできるものではなく、人との関係の中で少しずつ練習していくものなのだと思います。
そして、その練習の先に、自分たちの関係を少し離れて見つめることのできる、より広い人間関係の世界があるのではないでしょうか。
(臨床心理士 調)


