こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
10月も終わりに近づき、朝晩の冷え込みがぐっと増してきました。
日の出が遅くなり、朝、布団から出るのがつらいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
さて、毎回「こころ」に関するさまざまな話題をお届けしている当ブログ。
前回は、頑張りを継続するタイプの方に向けて「ゆるめる方法」(スイッチoff)をお伝えしました。
今回はその続きとして、「集中力を高めて、気力を前向きにする方法」(スイッチon)について、綴りたいと思います。

onの質は、前の晩のoffで決まる
理想的なのは、ゆっくり休息できた睡眠のあと、自然のリズムで、明け方にヤル気スウィッチがon(交感神経が優位)になることです。
冷却が過度にならないよう冷蔵庫のサーモスタット(温度調節器)が働くように、自律神経は本来、生体リズムとともに身体を調整しています。
決まった時刻に起床して動いているうちに、しっかりとしたonになり、出勤や行動のスタートへ持っていけるのが、理想的な形です。
人間も動物だと考えると、もともと備わっているリズムに乗った生活のほうが、うまくいきそうです。

そして、朝のonを上手に入れるための土台は、夜のoffです。
前回お伝えした「ゆるめる工夫」は、翌朝のonを有効にするためのものでもあります。
たとえば、就寝の1時間ほど前からは、スマホやパソコンの画面から離れてみる。
画面の強い光(ブルーライト)は、脳を刺激して交感神経を優位にし、「まだ昼」の状態に引き留めてしまうからです。
それでは、朝のスイッチonを作る具体的な方法を、順番にご紹介します。
① 朝は、光と一緒に始める
起きたらカーテンを開き、窓を開けて、朝の光を見ながら深呼吸をします。
光が目から入ると、体内時計がリセットされ、脳内ではセロトニンが分泌され始めます。
セロトニンは、気持ちの安定や意欲に関わる物質であり、「幸せホルモン」とも呼ばれる物質です。
さらに、セロトニンは夜になると、睡眠のホルモン(メラトニン)の材料にもなります。
つまり、朝の光は、その日の活動だけでなく、夜の眠りにもつながっているのです。
曇りの日でも、屋外の光は室内の照明よりずっと明るいものです。
日の出が遅くなるこの季節こそ、起きたらまず窓際へ、を合言葉にしてみてください。
② 朝食で、脳のエネルギーと「やる気の材料」を入れる
朝食は、炭水化物とたん白質の両方が望ましいです。
・炭水化物:脳のエネルギー源になります。
・たん白質:やる気(ドーパミン)、覚醒や集中(ノルアドレナリン)、気分の安定(セロトニン)など、脳内伝達物質を作る材料になります。
脳内伝達物質を作るのに、たん白質が要るそうです。
ご飯に卵や納豆、パンにヨーグルトやチーズなど、簡単な組み合わせで十分です。
そして、好きな飲み物でカフェインの力もいただきましょう。
食欲がない朝は、ひと口でも、飲み物だけでも、何か入れることから始めてみてください。

③ 決まった時間に気持ちよく出る
出勤など、行動を始める時刻をできるだけ決めておくと、体内時計が整い、身体が先に準備をしてくれるようになります。
また、化粧や身支度をすることもonへ切り替えるスイッチです。
スムーズにこれらの行動が出来るように、下準備(気候に合った服や道具の定位置を決めるなど)もしていきましょう。
気持ち良く出発したら、心の中では「今日やるべき事を、今日やろう」という気持ちを持ちます。
前回お伝えしたように、頑張り屋さんの頭の中では、仕事の件がいつまでも片付かないまま、「1人反省会」が続きがちです。
今日の分を今日で区切るという意識は、その反対の方向に働きます。
今日の分が終わったら、スイッチをoffにしてよいのです。

④ 歩く、自転車に乗る、駅の階段を登る
出勤のために歩く、自転車に乗る、駅の階段を登るなど、体に適度な負荷をかけると、前向きな気分が作られます。
心拍が少し上がることで、身体が「活動モード」に切り替わるからです。
また、ウォーキングのようなリズム運動は、セロトニンの分泌を促進すると言われています。
ひと駅分歩く、エレベーターの代わりに階段を使うなど、息が少し弾むくらいで十分です。
疲れが強い日は、無理をしないでください。
⑤ やる気を入れる呼吸は、「吸うこと」を強調する
ゆるめる呼吸は、吐くことを強調してゆっくり行いました。
やる気を入れる呼吸は、反対に吸うことをやや強調する呼吸です。
吸う息は交感神経、吐く息は副交感神経と結びつきやすいと言われています。
1.背筋を軽く伸ばして、鼻から3秒で吸います
2.胸郭を広げ、背中側まで空気を入れるイメージで
3.口か鼻から2秒で吐きます
4.これを10回くり返し、最後に普通に呼吸して、すぐ行動に移ります
背筋を伸ばすことで、覚醒度も上がります。
途中でめまいや息苦しさを感じたら、中止して普通の呼吸に戻してください。

⑥ 先に身体を「やる気のある人」にする
要は、身体を先に、やる気のある人の姿勢にすると、後で心理状態がついてきます。
うつむいて背中を丸めたまま、元気を出そうとしても、なかなか難しいものです。
身体を「戦うモード」にするには、次のようにします。
・背筋を伸ばす
・視線を上げる
・足を踏ん張る
・腹部を軽く固める(体幹を固める)
・「フッ!」と息を吐く
・声を出す
たとえば、お相撲さんの立ち合いを想像してみましょう。
腰を落として構え、呼吸を合わせ、一気に踏み込む。あの身体の使い方が、まさに「戦うモード」です。
ピラティスなどで、体幹を意識するのと似ています。
onとoffを、行き来する
onだけでも、offだけでも、うまくいきません。
大切なのは、onとoffを、ほど良いバランスで行き来することです。
これは、1日の中でも同じです。
昼食を抜いて、ずっと「戦うモード」を続けている方がいらっしゃいます。
食べるときには唾液が出て、副交感神経が働きます。
緊張が続くと、お腹がすかず、飲み込むこともしづらくなります。
昼休みは、1日の中の小さなoffの時間です。

自律神経のバランスを自然に整える力は、年齢を重ねるとともに弱まりがちです。
だからこそ、onとoffの両方を、意識して習慣にしていくことが必要になります。
また、目の前の今日だけでなく、1年後、3年後、さらに5年後、10年後と、少し長い目で自分の身体と心を見てみてください。
一度に全部を試す必要はありません。
まずは明日の朝、窓を開けて深呼吸するところから始めてみましょう。
(臨床心理士 調)


