「ヤングケアラー」に大人が想像を巡らして欲しい-福岡臨床心理オフィスの臨床心理士によるブログ-

こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
8月も半ばに差し掛かり、暑い日々が続いていますね。
毎回、臨床心理士ならではの目線で様々なテーマについて綴っている当ブログですが、今回は最近注目が集まっている「ヤングケアラー」について書きたいと思います。


■最近よく耳にする「ヤングケアラー」とは?

 

セミの声が一斉に聞こえて、夏の日差しのギラギラした色あいや、空が青く晴れていると、決まって子どもの頃の夏休みをぼんやりと思い出します。
ゆっくりとした時の流れの中で、ラジオ体操に行った景色や祖父母宅で過ごす自由でわくわくした感覚、昼ごはんの素麺のおいしさなどが心に残っています。

大人になって振り返ってみると、そのキラキラした思い出は5歳から9歳頃までの5年間くらいでしょうか。思春期に入る前の、好奇心が活発で大人に充分に保護されていた期間です。同じ5年間という時の長さであっても、最近の5年間とは質の違う、子ども特有の心身の成長が著しい濃密な時間です。
そしてその後は、親や家族の関わりよりも親密な友人関係を求める傾向のある思春期へと移ると言われています。

さて、ここで「ヤングケアラー」と呼ばれる子ども達を紹介します。
「ヤングケアラー」とは、大人が担うようなケアの責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどをする18歳未満の子どもと位置付けられています。政府の実態調査によると、公立中学2年生の5.7%と言われています。


■「ヤングケアラー」となった子どもたちはどうなるの?

 

ケアの負担が重くなると、学業や友人との交流など、子どもらしい生活ができなくなるのが問題です。
そして、私の観察から浮き上がって来るのは、子どもは日々日常の生活の中で親が困っていたり親から助けを求められれば頑張って応えることが多く、それを当たり前と感じ易い事です。

友人の家に遊びに行った時に「自分の家とはずい分違うなぁ…」と、ちらと思うのですが、親や大人を批判出来るようになるには相当な長い時間が必要です。

もちろん、責任感や忍耐力が養われる良い面もありますが、心理士として心配するのは、子どもらしい生活が確保されなかった事で、生きる事の楽しさや充足感の体験が乏しくてその後虚無感を感じ易くなる事です。
学校においては「まるで小さな大人のように振る舞うしっかり者の子ども」は特に注目されなかったり、かえってそのしっかりした部分を評価される事もあるようです。
大人になってから出会う「もとヤングケアラー」達は、失われた子どもらしい時間に悲しい思いを抱いていて、誰にも気付かれなかったし、気付いて欲しいと助けを求めなかったと言います。

今、「ヤングケアラー」ということばが少しずつ使われるようになりました。
大人である私たちがそのことばの意味に想像を巡らせて、子どもに子どもらしい時間が確保されているかを見守って欲しいと思います。

(臨床心理士 調)

PAGE TOP