こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
大型連休を目前に控え、当オフィスがある博多駅周辺も普段よりざわついた雰囲気が漂っています。
新型コロナウイルス禍の影響で、昨年まで2年連続して中止となっていた福岡を代表する国内最大級の祭り「博多どんたく港まつり」が今年は開催されるというニュースに、明るい気持ちになりました。感染拡大に気を遣いつつ、3年ぶりの祭りを楽しみたいですね。
さて、毎回臨床心理士の立場からさまざまなテーマでお届けしている当ブログですが、今回は「ブロークンウィンドウ理論の反対にある場所」というタイトルで綴りたいと思います。
ブロークンウィンドウ理論(割れ窓理論)とは
「ブロークンウィンドウ理論」という言葉をご存じでしょうか。日本では「割れ窓理論」という名前でも呼ばれていますが、1度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「ブロークンウィンドウ理論」は、心理学者・フィリップ・ジンバルドが1969年に検証した「人が匿名状態にある時の行動特性実験」で、「人は匿名性が保証されている・責任が分散されているといった状態におかれると、自己規制意識が低下し、『没個性化』が生じる。その結果、情緒的・衝動的・非合理的行動が現われ、また周囲の人の行動に感染しやすくなる。」という結論を踏まえ、アメリカ出身の犯罪学者であるジェームズ・ウィルソン氏とジョージ・ケリング氏が発案した理論です。
建物の窓が割れている状況を放置していると、犯罪に誰も配慮してない場所として認識され、ほかの建物の窓が破壊される状況を招くというもの。小さな違反や犯罪に対して見てみぬふりを続けると、そこにいる人たちのモラルや良心も低下して犯罪の多発に繋がる、という考え方です。
この理論に基づいて、ニューヨークの地下鉄に描かれていた多数の落書きを徹底的に消去した結果、地下鉄内での犯罪が大幅に減少しました。
日本でも、2001年に北海道札幌警察署が「ブロークンウィンドウ理論」を採用し、違反駐車を徹底的に取り締まることで路上駐車が激減しました。また、地域ボランティアと協力して行った街頭パトロールにより、犯罪発生率を減少させています。
「ブロークンウィンドウ理論」は、犯罪に対してのみ有効な訳ではありません。ビジネスの場でも活用され、職場や労働環境を美しくすることで働く人の意識を変え、業績アップを実現した企業もあります。
ブロークンウィンドウ理論の反対にある場所とは
ここで私が考えたのは「ブロークンウィンドウ理論の反対にある場所」についてです。
人が犯罪に配慮していない場所であるという象徴が「窓が割れたままの建物」であるならば、その真逆にあるのは「人の手がかけられている場所」ではないでしょうか。
そこで私は想像を膨らませて、心の中の世界をイメージします。
心の中の世界がもしも殺風景で、人の気配や自然の温もりが無く雨がザーザー降っているような時…。
自分に対して「どうせこんなものだろう」と投げやりになっているような時は、外の世界へ良い影響をもらいに行きましょう。
この時に訪れるのは「割れ窓」の反対にある「人の手がかけられ、丁寧にしつらえられた場所」を選んでください。
外へ出ることを負担に感じるなら、まずはふわふわの布団や温かいベッド、肌触りが良い毛布などに包まれてくつろぎ、ゆっくり休息をとってからで大丈夫です。
投げやりな気持ち…自分の心の世界が「ブロークンウィンドウ」状態の場合は、休息をとることが最初の手当て。そうして心を休めてから、外の世界の良質な場所へ足を運びましょう。
人の手がかけられている場所には、そこに対する人々の愛情やこだわり、歴史がある場所ならば先人たちの想いなどが息づいています。
そういう「割れ窓の反対にある場所」を、普段から自分の心の避難場所として気に留めておきたいですね。
(臨床心理士 調)