こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
5月も後半に入り、日中は少し汗ばむような陽気の日も増えてきました。街路樹の緑も日に日に濃くなり、季節がゆっくりと初夏へ向かっていることを感じます。
新年度の慌ただしさが少し落ち着き始めるこの時期、「職場での人間関係」や「伝わりにくさ」について、改めて考える機会が増える方もいらっしゃるようです。
今回は、カウンセリングの中で時折話題になる「コミュニケーションから見える情報処理のスタイル」について、書いてみたいと思います。

「ちゃんと伝えているのに伝わらない」理由は?
私は、仕事場での「報・連・相(報告・連絡・相談)」は大切だと思っています。
しかし、クライエントさんのお話を伺っていると、時々ある共通した困り感に出会います。
例えば、新入社員の方が上司へ報告や質問をした時に、
「こちらが伝えたいことがうまく伝わらない」
「質問したのに、欲しかった答えと少し違う返答が返ってくる」
「上司が“はてな?”という反応をする」
そんな経験です。
一方で、上司側も「ちゃんと説明しているつもり」である場合が少なくありません。
すると新人さんは、
「自分の質問の組み立て方が悪いのかな」
「話し方が悪いのかな」
と、自信を失ってしまうことがあります。
もちろん様々な要因がありますが、私は時々、ここに「脳の情報処理の得意さの違い」が関係しているのではないか、と考えることがあります。

K-ABCという認知能力検査
子どもを対象にした「K-ABC」という認知能力検査があります。
この検査では、その人が主にどのように情報を整理し、課題解決を行っているのかを見るために、
➀同時処理
➁継次処理
という特徴を参考にします。
どちらかが優れていて、どちらかが劣っているという話ではありません。
どちらの力も誰もが持っていますが、人によって“得意な使い方”に違いがあるのです。
また、発達に偏りのある子どもたちでは、この差が大きく現れることもあると言われています。

同時処理が得意な人の特徴
同時処理が得意な人は、情報を「全体との関連で理解する」傾向があります。
複数の情報を同時に関連づけ、因果関係を知ろうとしながら、そのことを把握しようとします。
例えば「福岡市とはどんな都市ですか?」と聞かれると、
「九州の北側にある」
「昔からアジアとの商いが盛んな場所」
「最近はインバウンドも多い」
「人口も増えている」
というように、地図・歴史・経済・現在の状況などを行き来しながら、全体像として説明することがあります。
仕事でも、
「この仕事は全体の中でどんな意味があるのか」
「何と何が繋がっているのか」
が分かることで取り組みやすくなるタイプです。

継次処理が得意な人の特徴
一方、継次処理が得意な人は、情報を順序立てて整理することが得意です。
・まず何をするか
・次に何をするか
・どの順番で覚えるか
というように、時間軸や手順に沿って理解していきます。
同じ「福岡市」の説明でも、
「人口は約167万人(2025年9月1日時点)」
「1972年(昭和47年)に政令指定都市になった」
「現在は7区ある」
というように、1つずつ積み上げる形で説明する傾向があります。
職場でも、
「まずこれを覚えて」
「次にこれをやって」
「基本を積み重ねて理解する」
という進み方が自然に感じられることがあります。
コツコツ積み重ねながら、正確に理解していく力とも言えるでしょう。

話が噛み合わなくなるのはなぜ?
実は、聴覚から入る情報は、時間の流れに沿って入ってくるため、継次処理的になりやすいとも言われています。
一方で、同時処理が得意な人は、空間的・全体的に捉える傾向があり、話が前後に飛ぶこともあります。
図や表を使って目に見えるようにする、空間の動きを示すことで、より相手に伝わりやすくなります。
そのため、仮に
・上司は同時処理が得意で「全体像から説明するタイプ」
・部下は継次処理が得意で「順番に説明してほしいタイプ」
だった場合、お互いに「話が噛み合わない」と感じやすくなります。
逆に、
・上司は「継次処理が得意」
・部下は「同時処理が得意」
だった場合には、「細かい説明が多すぎる」「なぜその仕事をするのかが見えない」というズレが生まれることもあります。
同時処理が得意な人にとっては「そこはもう分かっているから、先に全体を知りたい」という感覚があり、継次処理が得意な人にとっては「順番に積み重ねないと理解しづらい」という感覚があります。
どちらが正しい・間違っているではなく、“情報の扱い方”が違うのです。

チームにはどちらのタイプも必要
こうした違いを知るだけでも、「伝え方が悪いから」「理解力が低いから」という話だけではなく、「情報処理の得意さが違うのかもしれない」という見方ができるようになります。
そして願わくば、マネジメントをする立場の人たちが、こうした「自分の表現の仕方の特徴」を知り、相手の得意さに配慮した情報の発信ができると、働きやすさは変わるのではないかと思っています。
(臨床心理士 調)


