こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
2月下旬に入り、厳しい寒さと暖かな日差しを感じられる日が目まぐるしく入れ替わる日々が続いていますね。
体調をしっかり整えて、春を待ちましょう。
ところで「博物館浴」という言葉を耳にしたことがありますか?
本日は「博物館浴」をテーマにお届けしたいと思います。
■博物館や美術館を訪れることで得られるものとは?
先日、「博物館浴」という言葉に興味が湧いてネットや新聞記事で確かめました。
どうやら、博物館や美術館へ行くと得られるリフレッシュやリラックス効果を、健康増進に活用する取り組みとして「博物館浴」とネーミングし、広めていこうとしているようです。
九州産業大学の緒方教授(博物館学)は科学的な実証実験を行い、その結果を踏まえて「アートの力を心と体に浴びる『博物館浴』として提案し、もっと気軽に博物館(美術館)に足を運んでもらいたい」という期待を込めているとのことでした。
また、カナダやイギリスの医師が処方箋に「美術館への訪問」と記す試みが始まっていて、博物館や美術館の医療福祉分野への活用は国際的に注目されているそうです。
内閣府が平成21年に行った世論調査によると、1年間で美術館・博物館に行った人は42.2%、行った回数は「1~2回」が26.8%、「3~5回」が11.5%、「6回以上」3.9%でした。日本には5700以上もの博物館や美術館がありますが、あまり気軽に行ける場所にはなっていないようです。
(3) 美術館・博物館での鑑賞経験
この1年間で,美術館・博物館に何回くらい行ったか聞いたところ,「行った」とする者の割合が42.2%(「1〜2回」26.8%+「3〜5回」11.5%+「6回以上」3.9%),「行かなかった」と答えた者の割合が57.5%となっている。
都市規模別に見ると,「行った」とする者の割合は大都市で,「行かなかった」と答えた者の割合は町村で,それぞれ高くなっている。
性別に見ると,「行った」とする者の割合は女性で,「行かなかった」と答えた者の割合は男性で,それぞれ高くなっている。
年齢別に見ると,「行った」とする者の割合は60歳代で,「行かなかった」と答えた者の割合は70歳以上で,それぞれ高くなっている。出典:「文化に関する世論調査」(内閣府)
https://survey.gov-online.go.jp/h21/h21-bunka/2-1.html
(2022年2月25日に利用)
さまざま絵画や彫刻などの芸術作品や、興味を刺激する展示物などを鑑賞することが心に良い影響を与えることは、何となく誰もが感じていることだと思います。
しかし、それをデータという数字で表すのにはまだまだ時間がかかりそうです。
■心の窓を開いて鑑賞することを意識する
さて、ここで考えたいのは美術館・博物館で作品や展示物をどのような心持ちで鑑賞するのかということです。それは、きっと人によって異なることでしょう。
たとえば「心の窓を開けて作品を味わおうとする態度」と、「有名だからとりあえず観ておこうとする態度」では、作品や展示物に向ける眼差しが違うように思います。
私が若い頃、友人と一緒に美術館へ出かけた際に印象深い出来事がありました。
さまざまな作品を鑑賞する中で、友人から「どの作品が一番好きだった?」と聞かれました。
この質問が、私に美術を鑑賞する“意味”を与えたのです。
『そういえば、どの作品に一番惹かれたのだったかしら…』と振り返り、不謹慎かもしれませんが『もしも手に入れることが出来るとしたら、どれを連れて帰りたいか?』と考えたり、『作品が何かを語りかけてきている』と想像するようになりました。
友人の質問をきっかけに、私は“自分の心の窓を開けて作品を味わうと楽しい”ということに気付きました。
それまでは、受け身の態度で観ていたように思います。
美術品や展示品、さらには展示室や建築そのものも、心の窓を開いて自由に味わい、ゆっくり歩いたりお気に入りの作品の前で立ち止まったりしながら、リラックスして『博物館浴』『美術館浴』を楽しみたいものです。
(臨床心理士 調)