感覚過敏という性質について知る-福岡臨床心理オフィスの臨床心理士によるブログ-

こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
3月に入り、本格的な春の訪れを実感する日が増えました。街中の花壇にも色とりどりの花が咲き始めて、目を楽しませてくれます。
とはいえ、春ならではの不安定な気候も続いています。健康管理には気を付けたいものです。

さて、毎回“こころ”に関する様々なテーマでお届けしている当ブログ。
今回は「感覚過敏」について綴りたいと思います。

近年、メディアでもよく耳や目にするようになった「HSP」については、前回のブログ記事『「「HSPだと思う…」とカウンセリングに来所されたクライアントさんのその後は?』や、2021年の記事『「HSP(HSC)の自覚と対処法』でもご紹介しました。

今回のテーマである「感覚過敏」は、HSPの人や「繊細さん」とも深く関係することですので、ぜひ最後までお読みください。

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感覚過敏という概念を知る

 

まず、感覚過敏とはどういうものなのでしょう?
ここで、感覚過敏について知るためにとても参考になる本をご紹介します。
『感覚過敏の僕が感じる世界』(著/加藤路瑛、出版社/日本実業出版社)

感覚過敏の僕が感じる世界書影

著者の加藤路瑛さんは、2006年生まれで出版当時16歳の現役高校生です。
12歳で親子起業し、13歳で「感覚過敏研究所」を設立。現在は感覚過敏研究所所長を務めています。
加藤さんには聴覚・嗅覚・味覚・触覚の感覚過敏があり、中学校では教室の騒がしさに悩まされて中学2年生から不登校に。その後、通信制高校に進学しています。

この本をご紹介する理由は、感覚過敏当事者の思いだけでなく、家族の思いも実に細かく綴られているからです。

『感覚過敏の僕が感じる世界』の中で、加藤さんは感覚過敏について下記のように書いています。

「感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの諸感覚が過敏になっていて日常生活に困難さがある状態をいいます。感覚過敏は、病名ではなく症状です。そのため、診断名があるわけでもなく、治療方法があるわけでもありません。」

『感覚過敏の僕が感じる世界』(著/加藤路瑛、出版社/日本実業出版社)より引用

 

これを読んで、ハッとした人もいるのではないでしょうか。日常生活が困難ではないけれど、少し困る(ストレスを感じる)と捉えれば、数割の人に当てはまるのかもしれません。

本の中では、感覚過敏の具体的な症状についても触れられています。

 

視覚過敏 蛍光灯やスマホの画面、太陽の光で体調が悪くなる
聴覚過敏 大きな音、騒ぐ声、電車や教室など音で体調が悪くなる
嗅覚過敏 香水、食べ物のニオイなどで体調が悪くなる
味覚過敏 食べられるものが極端に少ない
触覚過敏 服の縫い目やタグが苦手、服が重く感じる
※『感覚過敏の僕が感じる世界』(著/加藤路瑛、出版社/日本実業出版社)より引用

 


感覚過敏と向き合うということ

 

私が『感覚過敏の僕が感じる世界』を読んで深く共感した部分は、加藤さんのこんな言葉です。

「感覚過敏を理由に何かをあきらめなくていい人生を送りたい。そのために自分ができることを考えよう。」

『感覚過敏の僕が感じる世界』(著/加藤路瑛、出版社/日本実業出版社)より引用

 

上記の言葉にある「感覚過敏」は、発達障害の人やHSPの人、「繊細さん」に置き換えられると思います。
加藤さんは、さらにこう綴っています。

 

「こうして、僕は感覚過敏に向き合うことを決意しました。」

『感覚過敏の僕が感じる世界』(著/加藤路瑛、出版社/日本実業出版社)より引用

 

臨床心理士として多くのクライアントさんに接してきた経験から、困りごとの原因に“向き合うこと”とはどういうことかを考えてみました。

それは

  • 感覚過敏について知識を得ること
  • 自分の性質を自覚して受け入れること
  • 専門家に相談すること
  • 生きやすくなるような考え方と方法を、体験とともに編み出していくこと
  • 人に助けを求めて良いと認識すること
  • 人に助けを求める行動をすること

ということです。

上記の中にある“専門家”についてですが、インターネット上には“こころの専門家”を名乗る人が大勢存在します。そういった人たちが様々な情報を発信している中で、正しい情報を見極めるのは難しいものです。
まずは出所がちゃんと示されている情報なのか、診断基準が明らかにされているサイトかを確認しましょう。

また、最後の「人に助けを求める行動をする」ですが、助けを求めてもそれを受け入れるか受け入れないかは相手の自由です。「受け入れてもらえたらラッキー」くらいの気持ちで行動すれば、受け入れてもらえなくても深く傷つくことは避けられます。

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感覚過敏を通して考える「私たちの世界」

 

今回ご紹介した『感覚過敏の僕が感じる世界』は、感覚過敏の自覚がある本人や家族、周囲の人はもちろん、そうでない人にも手に取っていただきたい一冊です。

日常に困難さを感じるほどではなくても、軽度の感覚過敏によって生きにくさを感じている人は多いことでしょう。
多数の人が感覚過敏の概念を知ることで理解が深まると、お互いに生きやすくなると考えています。

多様化が進んでいる現代だからこそ、感覚過敏について知識を得ることが大切だと思っています。

(臨床心理士 調)

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