こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
6月に入り、少しずつ雨の気配を感じる日も増えてきました。季節が移り変わるこの時期は、気温や湿度の変化に体が追いつかず、いつも以上に疲れやすさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
身の回りの環境が心身に与える影響について、改めて考える機会も増える季節です。
さて今回は、クライエントさんに来ていただく通常のカウンセリングとは少し違う経験について書いてみたいと思います。

学会で出会った「感覚過敏」への取り組み
先日、福岡国際センターで開催されたDCD(発達性協調運動障害)学会に足を運びました。
今回の大きな目的は、企業展示ブースに出展されていた「感覚過敏研究所」を訪ね、代表の加藤路瑛(かとう じえい)さんにお会いして話しをしたいと思いました。
加藤さんご自身のことや、著書については過去のブログ記事でもご紹介しています。以下の記事も、併せてお読みください。
■感覚過敏と感覚鈍麻~その違和感には理由がある

「感覚過敏」という切実な困りごと
「感覚過敏」とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚刺激に対して敏感であり、生活のしづらさにつながることがある状態を指します。
例えば、
・スマートフォンの画面の明るさがつらく感じる
・人の多い場所や騒がしい空間で強い疲労感を覚える
・飲食店のニオイや化粧品の香りなどで気分が悪くなる
・服の縫い目やタグが痛く感じて着られない
・味に敏感で食べられるものが極端に少ない
など、周囲には見えにくい困りごとが日常の中に存在しています。
感覚の感じ方は人それぞれ異なりますが、当事者の方にとっては「少し苦手」という程度ではなく、生活や学習、仕事に影響するほど切実な場合があります。
また、こうした感覚の困りごとは、周囲から理解されにくいことも少なくありません。
「気にしすぎでは?」
「慣れれば大丈夫」
と言われてしまうことで、自分の感じ方そのものを説明しづらくなってしまう方もいます。

12歳から始まった課題解決への挑戦
今回お会いした加藤さんは、2006年生まれの大学生です。
ご自身も感覚過敏による困りごとを経験され、その課題解決に向けて活動を続けてこられました。
現在は、
・五感にやさしい環境や配慮に関する研究コミュニティ
・感覚過敏を周囲に伝えるための意思表示ツールの普及
・当事者や家族が安心して交流できる場づくり
など、感覚過敏への理解を広げる取り組みを行われています。
加藤さんのブースでは、感覚過敏の人にとってストレスが少ないための工夫が凝らされた衣服が販売されていました。
その中で、加藤さんが「カンコ―学生服」さんと話し合いながら作った制服用のワイシャツに、触れてみました。
素材は綿100%で、襟は通常のワイシャツに比べて柔らかな感触です。
私自身も素材の感触が気になるタイプですので、縫い目の位置やタグの配置、素材の感触など、普段意識しない細かな要素が、誰かの暮らしやすさに大きく関わることを改めて感じました。

加藤さんに実際にお会いして感じたこと
以前からネット上で活動を拝見していましたが、実際にお会いした加藤さんの印象は、画面越しと変わらず誠実な好青年でした。
印象的だったのは、会場そのものが感覚刺激の多い環境だったことです。
展示ブースが並び、人の声やアナウンスが行き交う空間は、多くの人にとっては普通の場所かもしれません。
しかし、感覚過敏を持つ方にとっては、それだけで大きなエネルギーを使う場面になることがあります。
そのような環境の中でも活動を続け、課題解決のために発信されている姿を目の前で見て、自然と応援したい気持ちになりました。
会場では、実際に販売されているグッズを手に取ることもできました。
研究や工夫が、生活の中で使える形として届けられていることに意味を感じました。

私たちにできること
感覚過敏は、外から見えにくい困りごとです。
特に子どもの場合、「なぜ自分だけ苦しいのか」が言葉にならないことがあります。
大人から見ると問題がないように見えても、本人の中では強い不快感や疲労が続いているケースも少なくありません。
だからこそ、その困りごとに早く気づくことができる大人の存在は、とても大切です。
カウンセリングの現場でも、感覚の鋭さゆえに疲れやすさや生きづらさを抱えている方に出会うことがあります。
今回の経験を通して、誰かにとって快適な環境が、別の誰かには負担になることがあるという視点を改めて持ちたいと感じました。
一人ひとり異なる感覚を尊重し、誰もが安心して過ごせる社会について考える機会が少しずつ広がっていくことを願っています。
そして、一人の若き挑戦が、多くの人の「心地よさ」や「過ごしやすさ」につながっていくことを期待しています。
(臨床心理士 調)


