こんにちは。福岡臨床心理オフィスです。
9月も中旬に入り、まだ暑さの残る日もありますが、朝夕には少しずつ秋の気配を感じるようになりました。季節の変わり目は、夏の疲れが出やすい時期でもあります。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
さて、毎回“こころ”に関するテーマで綴っている当ブログ。今回は、日常のコミュニケーションでよく使う、「すみません」という言葉について考えてみたいと思います。

「すみません」は、便利な言葉なのかもしれません
クライエントさんとの会話の中や、プライベートの場面など、コミュニケーションの間合いを埋める言葉として「すみません」や「ごめんね」を多用する方にお会いすることがあります。
「すみません」は、元々は相手に対して謝意を表す際に使う言葉です。
しかし、会話の中で「すみません」を繰り返していると、言われた側が「そんなに謝らなくてもいいのにな」と思ったり、「こちらまで申し訳ない気持ちになるな」「なんだか、こっちの気分までへこんでしまうな」と感じたりすることも少なくないでしょう。
「すみません」という言葉には、少し不思議なところがあります。
たとえば、誰かに「すみません」と言われると、言われた側は「いえいえ、大丈夫ですよ」「そんなことありませんよ」「気にしないでください」などと返すことが多いのではないでしょうか。

つまり、「すみません」は、それを言われた側に一定の応答を求める類いの言葉でもあります。
もちろん、これは悪いことではありません。
ただ、「すみません」を頻繁に使うことによって、知らず知らずのうちに、その場の流れを自分にとって都合のよい方向へ動かしていることもあります。
たとえば、何かお願いをしたときに「すみません、お願いします」と言えば、相手から「いいですよ」と返してもらいやすい。
何かを指摘されたときに「すみません」と先に謝れば、相手もそれ以上強く言いにくくなる。
このように考えると、「すみません」は、ある意味では場を埋めたり、場の流れをコントロールしたりする便利さを持った言葉とも言えます。
もちろん、言っている本人が「場をコントロールしよう」と考えて使っているわけではありません。むしろ、そのことに本人は気づいていない場合が多いでしょう。

「自分を卑下すること」が習慣になっていないでしょうか
以前、このブログで仏教の教えにある「慢」の考え方について取り上げたことがありました。
自分自身を必要以上に低く見せる「卑下」についても、仏教では「慢」と関連するものとして捉えられることがあります。
自分を低く置き、何度も頭を下げることで、結果的には自分自身を低く評価することにつながってしまう。そう考えると、「すみません」を繰り返すことについても、一度立ち止まって考えてみたくなります。
症状として「すみません」が増えている場合
ただし、ここには少し注意が必要です。
たとえば、うつの症状があるときや、完璧さを強く求めてしまう傾向がある方が、「自分には価値がない」「他人に迷惑をかけてしまう」といった思いから「すみません」を多用している場合は、まずはそれが症状の一部として現れている可能性に気づくことが大切です。
そして、その症状に引っ張られない方向性に進んでいくことが必要になります。
一人で考え方を変えていくことが難しい場合には、カウンセリングを利用して、自分のものの見方や考え方の傾向を見直していくのも一つの方法です。
「謝る」より「感謝する」ほうがしっくりくる場面
さて、日常でつい「すみません」を使いがちな方にお勧めしたいのが、「すみません」を「ありがとう」に言い換えることです。
たとえば、パートナーに家事をしてもらったとき。
「家事ができなくてごめんなさい」と謝る代わりに、「やってくれてありがとう」と言うこともできます。
職場でケアレスミスを指摘されたとき。
「すみません」ではなく、「ご指摘ありがとうございます」と言い換えられます。

スーパーなどで、知らない人からちょっとした気遣いをしてもらったときも、「すみません」ではなく「ありがとうございます」と伝えるのも良いでしょう。
本当に申し訳ないと思っているのであれば、「すみません」でよいでしょう。
「助けてもらってありがたい」「気遣ってもらってうれしい」という感謝の気持ちが中心なのであれば、「ありがとう」の方が、自分の心の動きと言葉のハーモニーがしっくりと来るかもしれません。
「すみません」は、本当に謝りたいときのために
「すみません」や「ごめんなさい」が悪い言葉なのではありません。本当に申し訳ないことをしたときには、きちんと謝ることが大切です。
だからこそ、本当に謝る必要があるときのために、「すみません」を取っておきましょう。
「すみません」ではなく、「ありがとうございます」で良い場面が、意外とたくさんあるかもしれません。

言葉は、単なるコミュニケーションの道具ではありません。自分が自分をどう扱っているのかも、言葉には表れます。
だからこそ、必要以上に自分を低くする「すみません」を少しだけ減らして、感謝を伝えたいときには、潔く「ありがとう」と言ってみませんか。
(臨床心理士 調)


